SEで成功するための一番大切な基本

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、WHO(世界保健機関)が「緊急事態」を宣言してから丸2年が経ちました。IT業界に身をおく私の近辺でも、リモートワークが増えて地方移住を選ぶ人が出てくるなど、働き方や暮らし方の変化をひしひしと肌で感じています。

人生のターニングポイントを迎える人も多かろうこの時期に、私も引き続き新しい出会いを求めて採用活動に力を注いでいます。マイナビでも募集も始め、うれしいことに多くの応募や問い合わせをいただいております!。引き続き募集しておりますので、ご興味ある方はエントリーしてみてください。ぜひとも一度お話ししましょう!

プロジェクトリーダーの最初の仕事

さて前回、「若いときにたくさん打席に立った方がいい」という話をしたら、「多くの打席に立って、具体的にどんな成長があったのか知りたい」という質問をもらいました。それを受けて、今回は当時のエピソードを少しご紹介したいと思います。今でも当時を思い出すと、つらさが蘇ってきてちょっと涙ぐみます(笑)。
20代からとにかく“打席に立った”方がいい理由 (mcs-soft.com)
私がプロジェクトリーダー(以下、リーダー)になったのは、26歳のとき。携帯電話(3G)の交換機のセットアップといったシステム開発を担う10人程度のチームに配属になりましたが、月300時間以上働くのが常態化している激務な職場でした。そんな環境なので、スキルアップして早々に転職されたり、激務で体調を崩して離脱されたり上司がどんどん変わっていきました。しまいには、リーダーを任せられる先輩がいなくなり、残されたのは同期や後輩などいわゆる“ペーペー”ばかりに…。

そこで社長が次のリーダーに指名したのが、私です。優秀だったからではありません。入社2年目で、まだまだプログラミングも危うい技術力の私に白羽の矢が立ったのは、私が体も態度もデカイ(身長188㎝)こともあるかもしれませんが(笑)、「誰もやらないなら自分がやるしかない」という空気感を漂わせていたからのように思います。社長も、頼めば断れない男だと思っていたのでしょう。ただでさえ仕事量が多いのに、プロジェクトの管理などやりたくない!という他のメンバーの空気感もありました。

そんな風にメンバーが思うのは仕方がないくらい、引き継いだ当時のチーム状況は散々でした。全体のスケジュールが遅れている上に、試験の工程に入ればバグが多くて品質が良くない。だから、毎晩終電まで働き続ける状態。私自身も平日はずーっと会社で、休日は家で死んだように寝ているだけ。シャワーを浴びていると訳も分からず自然と涙が流れてくるぐらい毎日疲れていて、周りから心配されるほどブラックな働き方をしていたと思います。これで結果が伴わなければ、やりがいどころか、モチベーションも上がるはずがありません。

自分自身のためにもなんとかしなければ!と、まずは負のループを断ち切る方法を考えました。そこで思ったのが、「締め切りまでにやることを整理してきちんとやる」。シンプルで当たり前なことですが、これが全然守れてないのが、みんながつらくなる諸悪の根源。ならばまず現状を把握して整理することが、リーダーとしての最初の仕事であり、チームを変えるカギだとも思いました。

欲しいのは日記ではなく進捗

最初に取り組んだのは、「作業日報の見直し」です。業務終了後に提出する当時の日報は、ルールもフォーマットもありませんでした。その日にあった出来事や感想がつらつら書かれている日記状態のものが多かったです。

感想はいりません。欲しいのは、「その日の予定の作業内容」「作業に対しての成果度」「それが全体の進行に対して間に合っているのか、遅れているのか」の大きく3つ。その3つを徹底して書くようにメンバーにお願いしました。

私自身が全体の日単位、週単位の進捗を把握したかったことが大きいですが、スケジュールを視覚化することで入社1〜2年の若いメンバーにも、自分の仕事の進行がゴールに対してどの位置なのか、より認識して欲しいと思いました。納品というゴールが半年先だとしたら、2カ月先はどうならないといけないか、1カ月先には…、1週間先には…と逆算しながら作業を分解して、より具体的な日々の予定を立ててもらうトレーニングをしてもらったイメージです。「そんなの社会人として当たり前じゃん!」と思う人も多いでしょうが、その当たり前ができない人は本当に多い。長いスパンで1つのプロジェクトを高品質な状態で完遂するSEは、「自分を自分でマネジメント」できなければ致命的です。とにかく、 “その日暮らしのような仕事ぶり”を抜け出すことを徹底しました。

「日報」を変えただけで得たもの

同年代のリーダーの口うるさい指示に、最悪な現状を把握してくれるメンバーは、文句を言わずに協力してくれました。蓋を開けてみると、進行を視覚化して認識したことで、「やらなければ!」という各自の意識が強まったと思います。自発的に逆算して日々の仕事を明確にする習慣を少しずつ身につけてもらうことができただけでなく、遅れが生じたらギアを入れ直したり、週単位でスケジュールを組み直したりの調整もできるようになり、進行の大きな遅れはなくなりました。

私自身、全体の進行をしっかり把握できたからこそ遅れそうな気配を感じたら、日々の顧客との打ち合わせで、事前に現状を共有しながらの交渉で根回しし、何とか調整できるように努めました。恐らく、私より一回り以上年上の顧客も、リーダー未経験の若造が「人手不足のチームのリーダー」という貧乏くじを引いてしまったと、温かい目で見てくれていたのかもしれません。そのおかげで、喫煙室で悩んでいたら多部署の管理職の方がアドバイスをくださったり、私の意見に耳を傾けて広い心で任せてもらったりしました。顧客から叱られるということもなかったですね。

それが、「若いうちにたくさんの打席に立て」の1つの効用でもあります。手探り状態でも必死にチャレンジする若者には、多くの先輩たちが応援したくなるものだからです。そして、自分自身振り返ると、あのときの経験で相当メンタルが強くなりました。その他いろいろ大変なことがありましたが、その都度、睡眠を削って頭をひねって得た経験が、ちょっとやそっとのことでは慌てなくなる度胸と自信になったと思います。また、つらい気持ちになった経験は、必死な若者の気持ちに寄り添いながら、相談に乗ることもできるようになったように思います。